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からっぽな日常に色をつける

ボクの穴、彼の穴。

2016年5月28日PARCO劇場

 

ボクの穴、彼の穴。観てきました。

塚田くんの初主演舞台、そして初めての二人芝居。相手はアミューズの売れっ子の渡部秀くん。PARCO劇場のサヨナラ公演に、この二人のお芝居が入って、それを見ることができて良かったなあと思っています。

観劇前に代々木でぼんやりお茶飲んでたら、「塚ちゃんSASUKE出てる」って情報を見てしまい、SASUKE→穴→SASUKE??っていうハードスケジュールが頭を過ぎりました。そんな感じでドキドキしながら、PARCO劇場へ。PARCO劇場は内装がすごく素敵。開演前のベルを劇場スタッフの方がチリンチリン鳴らしてくれるのがとても良いです。

劇場内が暗くなり、双眼鏡の上げ下げでさえ音がしそうなくらいの静寂に包まれた時、

「戦争です」

という塚田くんの声から物語が始まる。

物語のあらすじは、砂漠の荒野に二つの穴がある。片方の穴は「ボクの穴」であり他方の穴は「彼の穴」二人は穴に身を潜めながら相手の出方を伺って戦争をしている。お互いに相手のことを「女も子供も殺すモンスター」だと「戦争マニュアル」に描かれた通りに、信じている。自分は人間だから相手を殺すことはしたくない、相手から「戦争をやめよう」と言ってくれる日を心待ちにしている。ある雨の日、何日も何週間も何ヶ月も孤独と戦ってきた彼らは次の月のない夜に「彼の穴」に忍び込み彼を殺し、この戦争を終わらせることを決心する。そして月のない夜に「彼の穴」に忍び込んだ。しかしそこには彼は居ない。彼の穴の中で、ボクは、彼の幸せそうな家族写真とボクの持っているものとほぼ同じ内容の「戦争マニュアル」を見つけてしまう。こんなに幸せそうな写真を持つ彼が本当にモンスターなのか?「戦争マニュアル」にはたくさんの嘘が載っていることにも気づいてしまった。互いが互いの穴で見た真実。「ボクらだけでも戦争をやめよう」という気持ちが湧き上がっていき……。

 

塚田くん演じるボク(塚田僚一)はずっと仲間からハブにされてきており、みんなの言うことを聞いて生きてきた人。この荒野にも一人で向かうよう指示をされ出て来た兵士。

渡部くん演じる彼(渡部秀)は真面目な学級委員長、でも自分はあんまり向いてないなと感じていた人。仲間の兵士を殺され、この荒野で一人になってしまった兵士。

対照的な人間二人が二つの穴の中で互いを認知し、自己を見つめる物語。具体的にどのような戦争なのかなどの描写が全くない分、戦争という一面から人間の社会で起こり得る普遍的な事象をとらえている作品だと感じました。

はじめは一人ずつ舞台上で語るのですが、中盤から後半に向けて段々とセリフが交互に交わされるようになり、後半のある一部分で二人が直接対面(互いの認知の上で/直接会ってはいない)します。彼らの体験や彼らの思いが交差する瞬間がその時だとは思うんだけど、その直接の対面もすぐに終わってしまうので、ああこれは互いの認知の上での事象なんだなと理解ができます。

 

演出のノゾエさんが、内面を見つめる的なことを仰っていたので、塚田くんも渡部くんもすごく自分の嫌な部分を見つめて、煮詰めて役作りを行ったのかなと感じました。

塚田くんが本当に最後まで「塚ちゃん」を見せずに塚田僚一さんのまま演じきっていて、カーテンコールの時に少しだけ口角が上がるところが印象的でした。

塚田くん渡部くん一週間という短い期間でしたがお疲れ様でした。